遺伝子解析により患者個別の薬物療法が可能に

治療の個別化に利用

同じ薬剤を投与しても患者によってその効果や副作用の発現の程度が異なるのは、薬物の体内動態(PK)と感受性(PD)に個人差が生じることが要因となっています。

薬物動態(PK)の個人差の程度は、薬物血中濃度の測定で計測できます。TDM(治療薬物モニタリング:Therapeutic Drug Monitoring)の対象となっている薬剤(ジゴキシン、テオフィリン、フェニトイン、シクロスポリンなど)は、薬物血中濃度を測定し、体内動態の個人差が生じないように投与設計されています。

血中濃度の測定が必要な薬剤は、①薬物血中濃度と治療効果および副作用に相互関係があり、②体内動態の個人差が大きく、③治療域が狭く、副作用発現域と接近している場合です。

また薬物の感受性(PD)の差は、薬物評価の指標が存在する薬剤において、その検査値を測定することで求められ、薬剤の選択や用法・用量の設定に利用されています。例えば、抗凝固剤であるワルファリンの薬力学指標にはプロトビン時間であるINRが用いられ、目標範囲内に収まるように調節されています。

体内動態(PK)と感受性(PD)の個人差は、先天的な要因と患者の疾病、併用薬などの後天的な要因の2つによってもたらされていますが、近年、これらの個人差に関係する遺伝子の変異が明らかになっています。

これにより薬物治療を行う前の段階で患者の遺伝子を調べることにより、あらかじめ薬剤が効果を示しやすい患者、あるいは副作用が発現しやすい患者を診断することが可能になり、その結果に基づいて投与量を調節するなど、薬物治療の個別化が行えるようになりました。