エンロン事件とは、世界最大手のエネルギー販売会社だったエンロンが経営不振に陥り、総額160億ドルを超える巨額の負債を抱えて倒産した事件です。エンロンは、相次ぐ海外の大規模事業の失敗などで実際には経営状況が悪化しているにも関わらず、CFO(最高財務責任者)の指示で不正な会計処理をして偽の財務報告をしていたのです。
不正行為をしていたのは会社だけでなく、財務報告の内容を監査すべき監査法人(アーサー・アンダーセン=世界5大会計事務所のひとつ)がエンロンの簿外取引や巨額債務を見逃し、不正に手を貸していたのです。不正会計が明るみに出るまでは、エンロンはアメリカを代表する優良企業とされており、その財務報告を信頼した多くのアナリストは同社の株を「ストロングバイ」として推奨していました。
2001年10月、「ウォールストリート・ジャーナル」紙が不正会計疑惑を報じると株価は一気に転落し、わずか2ヵ月後の同年12月、エンロンは裁判所に破産申請をして倒産しました。年金基金などの堅実で知られる投資主体も、エンロンの株・債券をポートフォリオに組み入れていた結果、同社の倒産により定年後の人生設計に大きな狂いが生じた人は数え切れないほどいるといわれています。同時に、約2万人の従業員が職を失うことになりました。
エンロン事件は翌年に起きたワールドコム事件(米国史上最大の倒産)と共にアメリカの株式市場全体に対する信頼を大きく低下させました。財務報告の信頼性を取り戻すことが急務となったアメリカでは、この事件を機にサーベンス・オクスレー法いわゆる「SOX法」の成立に向け動き出すことになったのです。