疾患の診断・治療への応用も進むDNAチップ

ゲノム創薬への期待も高まる

ガラスやシリコンウエハーなどを基板として、その上にDNA断片などを高密度に配置した「DNAチップ」は「DNAマイクロアレイ」とも呼ばれます。

DNAチップは作成方法によって大きく2種類に分類されます。

スタンフォード方式では、あらかじめ調製した目的の遺伝子配列を含むcDNA断片をPCR法によってプローブ用に増幅してスライドグラス上に高密度にスポットします。目的のcDNA断片があればマイクロアレイの調製が容易なことがこの方式の優れた点です。

もう一つは4種のヌクレオチドを順次反応させアレイ基板上にプローブとなるDNAを直接合成していく方式です。光を利用するフォトリソグラフ法が代表的で現在国内市場を席巻している米国製チップはこの方式です。

解析対象目的遺伝子のゲノムのデータベース情報があれば、オリゴヌクレオチドの事前合成ステップを介すことなくDNAチップすることができ、高性能のデータを得られます。

スポット方式で当ても立体構造を持つ繊維などを基盤に用いてハイブリダイゼーション部分を拡大したものや、各種スポット技術、さらにプローブとなるDNAについては解析目的に適した長さの合成ヌクレオチドの利用や蛍光標識色素の方式などについても検討されています。また体外診断用とに特化した電流検出方式専用のDNAチップも登場しています。

DNAチップは、ある細胞中の数千の遺伝子の網羅的解析や、ゲノム上の特定遺伝子の存在や変異の有無について調べる構造解析やゲノムの機能解析に適しています。

さらに、各種の疾病に特異的な遺伝子発現パターンの解析も実施できます。ゲノム解析の成果を使って、糖尿病、アルツハイマー病、循環器系疾患、リウマチなど、これまで研究が困難だった病気の原因遺伝子を捕まえることで発病メカニズムを調べる研究が進展しています。数個の遺伝子の発現が関与するアルコールへの感受性や、数十個の遺伝子が関与するストレス遺伝子などもこのDNAチップで判定することができます。

これは疾病の診断や治療に有用なだけでなく、ゲノム創薬と呼ばれる医薬品開発にも応用できます。現在の医薬品は15~20年という莫大な時間と費用が必要ですが、発病メカニズムの解明とゲノム情報の有効活用、薬の作用機序の解明などによって、より短期間で有効な新薬の開発が可能になります。