バイオ後続品事業を展開する企業の取り組みが本格化

大手製薬企業の提携も活発化

現在、約4,000億円規模のバイオ医薬品市場は、2015年には1兆円近くに成長するとされています(富士経済調べ)。

国内では2014年ごろを境に、特許切れとなる先発品が低分子医薬品からバイオ医薬品にシフトしていくといわれており、バイオ後続品市場も高い成長性が期待されています。

「バイオ後続品」とは、特許の有効期限が切れたバイオ医薬品と類似性の高い品質特性を持つことが認められた医薬品のことで、バイオ医薬品の後発医薬品です。

バイオ医薬品は化学合成された低分子の医薬品とは異なり、先発品と成分(アミノ酸配列)が同じであっても同等の有効性・安全性を持つとは限りません。

したがって、バイオ後続品の開発には、品質特性において先発品との類似性を高いことを示す臨床試験が必要となります。バイオ後続品の参入薬価は先発品の70%を基本としていますが、臨床試験の充実度に応じて上乗せされ、先発品に対して最大で77%となっています。

既に特許が切れたバイオ医薬品もあり、世界大手の後発品企業サンドが2009年に、国内初のバイオ後続品となるヒト成長ホルモン「ソマトロピンBS皮下注5㎎(10mg)」を発売しました。また2010年には、新薬メーカーの日本ケミカルリサーチとキッセイ薬品工業が共同開発したEPO製剤が、2例目のバイオ後続品として発売されています。

今後、売上規模の大きいバイオ医薬品の特許切れが本格的になることに備え、日本でも2010年後半から2011年にかけて、バイオ後続品事業を展開しようとする企業の取り組みが本格化しました。

特に大きなインパクトを与えたのが、協和発酵キリンと富士フィルムが発表した、バイオ後続品事業を展開するための合弁会社の設立です。協和発酵キリンは、国内メーカーの中でバイオ医薬品の開発実績が豊富で、製造ノウハウを持っている企業ですが、富士フィルムが写真フィルム事業で培った「ナノテク」レベルの緻密な生産技術を活用すれば、低コストで高品質の製品を製造できると期待されています。

両社の目標は、バイオ後続品事業を世界規模で展開し、磐石な地位を築くこと。EPO製剤や、開発中の遺伝子組み換えヒト顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF)製剤と比べると、今後特許切れを迎える抗体医薬は寄り複雑な構造を持つため、経験やノウハウを持つ両社の提携はより有利に働くであろうといわれています。

このほか、興和テバとG-CSF製剤を共同開発するとしていた日本化薬が、2010年11月に韓国企業と提携しました。また、持田製薬は富士製薬とG-CSF製剤を共同開発をしていましたが、2010年12月にはハンガリーの企業と提携しました。2010年9月にはmeijiseikaファルマが韓国企業と提携しバイオ後続品事業に参入すると表明。あすか製薬もバイオ後続品の遺伝子組み換え卵胞刺激ホルモン「AKP-501(開発番号)」を開発しています。

バイオ後続品は、本来であれば後発品メーカーが手掛けてもおかしくない事業ですが、国内大手後発品メーカーで積極的なのは2010年10月に韓国企業と提携した日医工に止まっているのが現状です。この背景には、低分子医薬品の後発品は1品目あたり1億円程度で開発できますが、バイオ後続品は1品目で50~100億円と言われるため、開発コストとリターンが見合うかを慎重に検討している企業が多いことがあげられます。