遺伝子の解析を病気や病態を狙い撃ちするゲノム創薬へ応用

ハプロタイプマップ

遺伝子(Gene)と染色体(Chromosome)の合成語であるゲノム(Genome)。遺伝子の本体はDNA(デオキシリボ核酸)と呼ばれる化学物質で、二重螺旋構造となっています。細胞核の中でその遺伝子が集合したのが染色体です。

DNAは、細胞分裂の際、もとの細胞をコピーすることで新しい細胞を作ります。また、DNAは糖(デオキシリボース)とリン酸が繋がった鎖で、鎖の間には4種類の塩基(アデニン、チミン、グアニン、シトシン)が一定の法則で並んで結合しています。

この法則に従った一列の配列が遺伝情報で、そこにはさまざまなタンパク質の生成に関連した指示が刻み込まれているのです。約60兆ある人間の細胞は、それぞれの遺伝子がそこでどのようなタンパク質をつくるのか、どのような役割の細胞(骨、筋肉、臓器など)に姿を変えるのかを指示するのです。

人間の生命活動のなかで、どのように成長し、衰えていくのかも、ゲノムに刻み込まれた遺伝情報でコントロールされていると考えられています。そして、その遺伝情報は親から子、子から孫へと代々受け継がれていくのです。

1990年、米国を中心に、日英仏独中の16研究機関の科学者が協力して、人間の遺伝子に刻み込まれた情報を解読する「国際ヒトゲノム計画」がスタートしました。そして人間の細胞核内にある染色内には約30億対の塩基配列が存在していることが判明し、その過程で約1000種にも上る病気の発症に関する遺伝子が発見されました。

また、この研究では人間のDNAは99.9%まで同じですが、残りの0.1%が異なることが分かり、この部分に人間の多様性や病気に関する個人差の原因があると考えられています。

2005年にはこの個人差の指標となるハプロタイプマップ(HapMap)の第1相データが発表され、2008年には寄り詳細な疾病関連遺伝子のマップを作製する「1000ゲノムプロジェクト」がスタートしました。

解読されたヒトゲノムの情報を基に、病気や病態を狙い撃ちする全く新しい医薬品を開発しようという試みが、ゲノム創薬と呼ばれる分野です。