病気と遺伝子の関連を解析し、医薬品を生み出すゲノム創薬

大手製薬企業は研究者を大量動員

従来の創薬プロセスは、数万存在する化合物を一つずつ調査することをベースにしていたため、新しい医薬品の候補物質の発見には研究者の経験だけでなく、勘や偶然といった面に頼らざるを得ない面がありました。

しかし、遺伝子情報をベースに病気との関連性を解析し、論理的かつ科学的に新たな医薬品の芽を見つけようとするゲノム創薬は、コンピュータに蓄積されたデータを特定の方式でデザインされたソフトウェアで検証するだけなので、効率が非常によいのが特徴です。

また、これまでの創薬が対象とするのは、生理機能の調節に関係する細胞の受容体や酵素あたりに限界があったため、400種類程度でした。しかし、遺伝子の産物であるタンパク質やDNAが対象になるゲノム創薬では、一気に3000以上に対象が拡大されるといわれています。

つまり、従来と比較して創薬のターゲットになる物質を発見できるチャンスが大幅に増えるだけでなく、そのプロセスでは研究者の経験よりも解析力が問われることになったため、ベンチャー企業の参入ができるようになりました。

2003年に人間の遺伝子情報の完全解読が完了したことを契機に、一斉に開始されたゲノム創薬は早いもの勝ちという投機的な側面を持ち合わせています。検証すべきターゲットはデータベースとして存在していますので、開発生産性をいかに高められるかどうかが重要になります。

近年、海外の製薬企業が莫大な資本力を背景に合併を繰り返し、研究者を大量に確保しているのは、そのスケールメリットを活かしてゲノム創薬競争を一気に征しようという野望があります。

世界最大の製薬企業であるアメリカのファイザーの年間研究費は、国内最大である武田薬品の5倍以上を誇っています。また欧米ではそれまで遺伝子解析を専門としてきたベンチャー企業がゲノム製薬企業となって、その規模を拡大中です。

欧米勢に押され気味だった日本の製薬企業も対抗手段として、異業種同士の提携や商社の資本参加などを行っていますが、規模の面では依然として大きく遅れをとっています。