内部統制システムを構築すべき法律上の義務を示した神戸製鋼事件

神戸製鋼所が、株主総会で円滑な議事進行に協力してもらう(他の総会屋が出席しないようにする)謝礼として、総会屋に対して利益供与を行い、また同社加古川製鉄所において裏金が捻出され、その一部が利益供与に用いられたという事件です。会社に計3億5400万円の損害を与えたとして株主代表訴訟が提起されました。

この事件は、1.元取締役会長が経営トップとしての責任を認め、3億1000万円の和解金を支払うこと、2.元専務取締役が利益供与についての法的責任を認め、1億5000万円の和解金を支払うこと、3.同社は、再発防止のためのコンプライアンス委員会を立ち上げ、新聞紙上で決意表明を行う、という条件で和解により解決されました。

神戸製鋼所の利益供与事件が、内部統制の面で注目されたのは、和解に際して裁判所から示された「訴訟の早期終結に向けての裁判所の所見」です。この中で、「神戸製鋼所のような大企業の場合、職務の分担が進んでいるため、他の取締役や従業員全員の同姓を正確に把握することは事実上不可能であるから、取締役は、商法上固く禁じられている利益供与のごとき違法行為(中略)等が社内で行われないよう内部統制システムを構築すべき法律上の義務があるというべきである。」としたのです。

簡潔にいうと、規模が小さな会社は、経営陣が社内に目を配ることにより会社を適切にコントロールできますが、大規模な会社では困難となります。そこで、その代わりに経営陣が内部統制システムの構築を決定することによって、適正に会社をコントロールする必要があるということです。

また、この所見の中では、企業トップの地位にありながら、内部統制システムの構築を行わないで放置してきた代表取締役は、社内における違法行為について「知らなかった」という弁明だけでその責任を逃れることができるとするのは相当ではない、としています。