中小企業関連を中心に大幅な改正が行われた会社法のポイント

平成17年、会社の設立や機関などに関するルールを定めていた「旧商法」「有限会社法」「商法特例法」を一つにまとめる形で「会社法」が制定されました。従来、そのような名前の法律は存在していませんでしたが、先述の3つの法律を便宜的にそのように呼んでいました。そこで、新しい法律は一般的に「新会社法」と呼んで区別しています。

旧商法の内容がどちらかといえば株式を公開している大企業を想定したものだったのに対し、中小企業の経営にも大きく配慮した内容となっています。


旧商法と新会社法の内部統制の規定
監査役設置会社においても大会社であれば内部統制の基本方針の決定とその開示が義務付けられるようになりました。

大和銀行株主代表訴訟事件
同行の行員が無断で米国財務省証券の取引を行って11億ドルの損失を出し、この損失を隠蔽するために顧客、大和銀行所有の財務省証券を売却して、大和銀行に11億ドルの損害を与えた事件です。

神戸製鋼所の利益供与事件
総会屋に対して利益供与を行い、また同社加古川製鉄所において裏金が捻出され、その一部が利益供与に用いられたという事件です。

新会社法が求める内部統制
第98条、第100条、第112条では「構築すべき内部統制」として、基本方針として決定すべき5項目、さらに監査役設置会社の場合にはプラス4項目が示されています。

基本方針として決定すべき事項
「取締役の職務の執行に係る情報の保存及び管理に関する体制」、「損失の危険の管理に関する規定その他の規則 」などの5項目が求められます。

監査役設置会社で決定すべき事項
基本方針として決定すべき5項目のほか、監査役監査の実効性を高めることを目的として4つの項目を決定することが求められます。


改正点のポイントとその目的
散在していた企業に関する規律を定めた法律を集約し、明治以来のカタカナ文語体表記をひらがな口語体表記に改め、内容を現在の社会・経済情勢に対応するように改定しました。

1人でも株式会社が設立できる
従来は4人のメンバーが設立時に必要でしたが、最低限、取締役が1人いればよいことになりました。

最低資本金制度の廃止
定款に「出資される財産の価額またはその最低額」を定めればよいと規定されました。つまり、最低額1円と定めても、株式会社を設立することができるようになったのです。

新しい債権者保護策
義務ではなく任意となりますが、税理士や公認会計士などの会計の専門家が取締役らと共同で財務諸表を作成する機関「会計参与」が導入され、財務諸表に対する信頼性が高まりました。

有限会社の廃止
全て株式会社としての規制を受けることになりましたが、「有限会社」と名乗る限り、従来の特例が適用されます。

有限会社を存続するメリットとデメリット
一度、組織変更を行ったら元に戻すことはできませんので、メリットとデメリットを比較して、慌てずに時間をかけて検討しましょう。

類似商号規制の廃止
手続を簡略化するなどの観点から、類似商号規制を廃止し、同一住所に同一の商号あるいは類似した商号は登記できないようになりました。

払込金保管証明書が不要に
事務手続きの簡素化を図る目的で、発起人が全株式を引き受ける「発起設立」の場合は、翌日に発行される残高証明でも出資の払込を証明できるようになりました。

検査役の調査要件が緩和
検査役の調査に関する資本基準の制限が撤廃され、一律500万円以下の財産を対象とするのであれば検査役の調査は必要ないということになりました。

機関設計自由の原則
最低限のルール(条件)を定めて、後はその規模や特性に応じて自由に機関構成ができるように、大幅な裁量が認められるようになりました。

取締役の責任が過失責任に
会社が損害にあわないように注意を尽くしたことを明らかにすれば、生じた損害を賠償しなくてもよい「過失責任」になりました。

取締役会での書面決議が可能に
取締役会で議論するまでのことではないと同意した場合においては、書面決議が認められるようになりました。

大会社に内部統制の構築義務
健全な経営のために、事業規模や特性に応じて構築されるリスク管理体制を、内部統制システムといい、相次いだ企業不祥事をうけて、コンプライアンス体制の強化のため導入が進められてきました。

重要財産委員会が取締役会の一部に
利用されていない委員会を独立機関として存続させておくことは合理性に欠けるという観点から、取締役会の決議要件の特則という位置づけに変更されました。

合同会社の新設
社員は全員、出資した金額以上の責任を負わない「有限責任社員」であるにも関わらず、定款により組織が自由に設計できるという点に大きな特徴があります。

会計参与の導入
新しく導入された機関で、公認会計士または税理士から構成され、計算書類などを作成し、株主総会での説明をする職務を担います。

社債発行の要件が緩和
取締役会を設置していない株式会社でも社債の発行が認められるようになりました。

配当がいつでも可能に
従来は年2回しか行なうことができなかった配当ですが、利益の還元方法の多様化・柔軟化を図るため、株主総会の普通決議でいつでも行えるようになりました。

基準日後の株主にも議決権
議決権を行使することのできる株主を定めるために基準日を設定していても、株式会社の判断で、基準日後に株主になった者にも議決権を行使させることをできるようにしました。

重要事項は株主への通知が必要
情報提供を徹底させる必要があるという観点から、株式譲渡制限会社に対して、一定の事項に関しては「通知」を義務付けています。

新株発行無効の訴えの提訴期間が延長
株式譲渡制限会社の場合、新株が市場で流通せず、提訴期間を延長しても法的安定性が大きく損なわれることがないという観点から、新株発行無効の訴えの提訴期間が1年に延長されました。

株主代表訴訟に制限
株主が自分や第三者の不正な利益を図ること、または会社に損害を与える目的を持っている場合には、株主代表訴訟は起こせないという制限が設けられました。

株主名簿等の閲覧請求を拒絶できる
株主名簿等の閲覧、謄写請求があった場合に、その目的が株主の権利行使と関係ない場合や、請求者が会社と競業する者である場合には、その請求を拒絶できると明確に規定しています。

端株制度の廃止で単元株制度へ一本化
一定の規模に満たない出資について管理コストを削減するという点で、この2つの制度は共通していました。そこで、この端株の制度を廃止し単元株制度に一本化が図られました。

種類株式の規定の整備
従来の資金調達から企業防衛手段としての面にも重きが置かれるようになりました。

合併等の対価の柔軟化
企業再編を円滑に進めるためには、存続会社の株式以外にも対価として認めるべきという観点から、現金や不動産、外国株を充てることが可能となりました。

三角合併が可能に
現在でも外国会社が日本の会社を直接合併することは禁じられていますが、三角合併の仕組みを利用すれば、間接的に合併することが可能になります。

略式組織再編の新設
新たに「略式組織再編」が創設され、特別支配会社の吸収合併や完全子会社化の際に、被支配会社の株主総会における決議が不要となりました。

簡易組織再編の要件が緩和
組織再編当事会社やその株主への影響が少ない場合には、総会の決議は必要ありません。従来から認められていた簡易組織再編の要件を緩和することになりました。

計算書類の変更
利益処分案が廃止され、株主資本等変動計算書が新設されるなど、計算書類にいくつかの変更が行われました。


新会社法における会社の種類
事業規模に応じて、最適な形態を選択できるようにするため、多様な種類が存在しています。

合名会社の特徴
会社で負った債務を個人で返す責任がある「無限責任社員」で構成され、社員は「出資」「業務の執行」「会社を代表する」の全てを行います。

合資会社の特徴
有限責任社員と無限責任社員で構成されます。「合名会社」に比べて、責任を軽減した出資の形態が用意されており、出資者を募りやすいというメリットがあります。

合同会社の特徴
新たに認められた形態で、社員の有限責任を確保しつつ、内部の関係については、組合的なルールが適用される特徴を持っています。日本版LLCとも呼ばれています。


会社の機関
法人として意思を決定し、実行するために設置される存在を「機関」といいます。

株主総会
株主のよって構成され、その総意によって会社の意思を決定する機関です。株式会社では必ず設置しなければなりません。

取締役
取締役会非設置会社において、業務を執行し、会社を代表します。複数いる場合には、会社の業務執行は原則として取締役の過半数で決定することになります。

取締役会
業務執行に関する会社の意思決定を行うとともに、取締役の職務執行を監督し、取締役の中から代表取締役を選定(解職)する権限を有しています。

代表取締役
業務を執行し、会社を代表する権限を持つ重要な機関です。従来はその設置が必須とされてきましたが、任意に改められました。

監査役
取締役の職務を常時チェックし、違法行為があった場合に、迅速に対応するために設置されました。

監査役会
全ての監査役から構成される監査機関で、監査役の調査を分担することによってその実効性を高めようという目的で導入されました。

会計監査人
大会社は会計監査の業務が膨大かつ複雑になるため、会計の専門家である会計監査人を必ず設置しなければなりません。

会計参与
取締役や執行役と共同して計算書類などの作成を担当し、株主総会で、それらの書類についての説明を行います。

委員会設置会社
「執行役」・「指名委員会」・「監査委員会」という3つの委員会が置かれた会社のことです。最大のメリットは「経営と執行の分離」が徹底されているという点です。

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